「社内にある備品を把握できていない」「備品の貸出・返却情報がわからない」など、備品管理担当者の悩みは尽きません。そんな悩みを解決できるかもしれないのがICタグ。タグ(tag)とは「荷札」「付箋」を意味する言葉ですが、その名が示す通りICタグを取り付けることでモノの識別が簡単にできるようになります。この記事では、ICタグの仕組みやその導入事例について紹介していきます。
目次
ICタグとは?
ICタグは、電波などの無線で通信する機能を持ったタグのことです。ICチップとアンテナを組み合わせた構造をしており、無線タグ、無線ICタグ、RFタグなど、さまざまな呼び方をされています。
製品化されたのは1980年代の初めごろ。当時は単価が1,000円以上と高額だったのですが、米ウォルマートが2002年にICタグによる商品管理を開始したことが発端となりタグの単価が低下。日本でもさまざまな業種で導入されるようになりました。最近ではアパレル業界での在庫管理にICタグが活用される動きが広がっています。
また、2017年4月には、経済産業省から「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」が発表されました。これは2025年までにコンビニ大手5社の全商品に電子タグを取り付けるというもので、レジの効率化による人手不足解消や万引き防止、食品廃棄ロスの削減などが期待されています。
このように活用の場面が広がっているICタグは、
- 複数タグの同時読み取りができる
- タグの表面が見えなくても読み取りができる
- 汚れに強い
- データの書き換えが可能
などのメリットがあり、物品管理の場面でも多く活用されています。
RFIDとICタグの違いをご存知でしょうか?
RFIDとはRadio Frequency Identificationの略で、シールラベル/タグ/コインなど、さまざまな形をしたICタグと、ICタグリーダを含んだシステム全体のことを指しています。
参照リンク : https://www.denso-wave.com/ja/adcd/fundamental/rfid/tec.html
ICタグの種類と読み取りの仕組み
ICタグは、その構造や仕組みによっていくつかの種類に分けることができます。この項では、ICタグの基本的な分類とその仕組みについて解説します。
□読み取り方式による分類:アクティブ型とパッシブ型
ICタグは、データを読み取る仕組みにより、アクティブ型とパッシブ型に大きく分けることができます。
≪ アクティブ型ICタグ ≫
- 電池を内蔵している
- 長距離の通信が可能
- タグ1枚あたりの単価が高い
- 電池寿命がある
≪ パッシブ型ICタグ ≫
- 電池を内蔵していない
- 短距離の通信が可能
- 小型化や薄型化ができる
- 半永久的に利用できる
パッシブ型ICタグは、読み取り機(ICタグリーダなど)が発する電波などをICタグ内部のアンテナが受けて電気に変えます。次に、内臓されたICチップに記録された情報を無線で読み取り機に返す…この2つのステップによって情報の読み取りができる仕組みになっています。
ちなみに、弊社が提供している物品管理クラウドサービス「コンビベース」で使われているのもこのパッシブ型の「UHF帯パッシブタグ」です。
□機能による分類:積層タグ・金属対応タグ・リネンタグ
ICタグを、その特殊機能により分類することもできます。有名なのは「積層タグ」「金属対応タグ」「リネンタグ」の3つ。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
・積層タグ:ICタグ同士が重なっていても読み取りが可能
積層タグは契約書などの重要文書管理に適しているICタグです。
通常のICタグの場合、タグ同士が重なっていたり近接したりすると、電波の干渉が起きて読み取りができなくなることがあります。そのため、一般的なICタグは、文書などの管理には不向きです。しかし積層タグを使えば、タグ同士が重なっていても読み取りが可能になります。
物品管理クラウドサービス「コンビベース」では、こうした積層タグを重要文書や契約書に貼付することで、定期的な棚卸し、貸出し・返却管理などに利用できます。
・金属対応タグ : 金属製品に取り付けても読み取りが可能
通常ICタグは、金属製品に取り付けると金属の影響を受けてしまい読み取りができなくなります。金属製品の管理にICタグを利用する場合には、金属対応タグを選びましょう。
金属対応タグには、
- タグ自体に厚みを持たせて金属面との距離を作ることで読み取りを可能にするタイプ
- 貼付している金属製品自体をブースターアンテナ化して読み取りを可能にするタイプ
があります。
こうした金属対応タグを、パソコンやサーバーなどのIT機器・計測器などに貼付することで、棚卸しや持出し・返却管理を効率化することが可能です。工具に取り付けが可能な超小型金属対応タグもあります。
・リネンタグ : クリーニングによる洗濯・脱水・乾燥・アイロンなどへの耐久性、耐熱性がある
一般的なICタグは、洗濯や脱水などを行うと、熱や圧力により壊れてしまい読み取りができなくなってしまいます。一方、リネンタグはクリーニングによる「洗濯」「脱水」「乾燥」「アイロン」などへの耐久性、耐熱性があります。その名の通り、リネンの管理に使われる他、作業着・制服・貸衣装などの管理に利用されています。
リネンタグには布製またはゴム製で柔軟性のあるタイプや、樹脂でコーティングされ強度の高いタイプなどがあります。
取り付けは、
- アイロンの熱で取り付ける(熱圧着)
- 直接縫い付ける
- 袋状にした布にリネンタグを入れて、取り付けたい衣類等に縫い付ける
などの方法があります。
取り付け対象が衣服の場合には、襟や袖口裏などの見えにくい場所に取り付けるケースが多いようです。
□ICタグの読み取り精度を低下させる原因
ICタグを物品に貼付しておけば、ICタグリーダをかざすだけで一括で読み取りができます。タグを一つ一つ探して読み取る必要はありません。箱の中の物品に貼付したタグも、箱の外から読み取りできます。
このように利便性の高いICタグですが、読み取り精度に不安を感じている方も多いようです。では、ICタグの読み取り精度が低下する要因は何なのでしょうか。
1.金属
ICタグを金属面に貼ると金属面でICタグリーダからの電波が跳ね返り、タグから放射される応答波が打ち消されて、通信不可能になったり、通信距離が短くなります。ICタグを金属に貼る場合には、金属から離す(浮かす)などの工夫をするか、金属面から反射した電波の影響を受けにくい、専用の「金属対応タグ」を使いましょう。
2.ICタグ同士の距離の影響
ICタグは複数個まとめて読み取ることができます。しかし、タグ同士が近すぎる場合や重なってしまう場合には、電波が干渉し合い読み取れないことがあります。そのような場合には「積層タグ」と呼ばれるICタグを使ってみましょう。たとえば、「積層タグ」を使って書類を管理すると、タグが貼られている書類が積み重なっている状態でも読み取り漏れを減らすことができます。
3.位置と角度
ICタグリーダーとICタグの位置関係も読み取り精度に影響します。読み取り精度が最も高くなるのは、図中のAのタグのように「電波が届く読み取り可能範囲に入っていて、タグとリーダライタが平行で正対した状態」です。
平行な状態であっても、BのタグのようにICタグとICタグリーダーが読み取り可能範囲に入っていなければ電波を受け取ることができません。また、読み取り可能範囲にあったとしても、Cのタグのようにタグがリーダライタに対して直角に配置された場合には読み取り精度が低下します。
ICタグを貼付する際には、実際に読み取る時の位置や角度なども考慮して貼付しましょう。

なぜICタグで棚卸しを効率化できるのか
従来の棚卸しでは、物品リストと現物を目視で確認し、1つずつ照合していました。バーコード付き管理ラベルを利用した場合でも、物品に貼付してあるバーコードを1つずつスキャナで読み取ることになります。そのため、物品数が増えるに従い、現物確認の作業に膨大な時間がかかっていました。
ICタグを利用した場合には、離れた場所から複数のタグを一括で読み取ることができるため、棚卸しの時間を短縮することができます。また、棚卸し作業は目視によるチェックから、タグを読み取るだけの作業に変わります。そのため、チェック漏れや見間違い・転記ミスなどのヒューマンエラーを防ぎ、正確性を高めることができます。
ICタグを活用した物品管理システムの導入事例
ここからは、実際に物品管理にICタグが活用された事例を紹介します。ICタグの強みはどんなところにあるか、という視点で読んでみてください。
約3000個の文書箱の入出庫と棚卸しをICタグで効率化:長野県農業協同組合
長野県農業協同組合では、ICタグを使って約3000個の文書箱の入出庫管理と棚卸しを実施しました。手作業で1週間かかっていた棚卸しが半日で終わるようになり、入出庫時の確認も含め厳格に管理ができるように。文書誤廃棄のリスクの低減にも成功しています。
図書館の貸し出し返却業務と蔵書点検を迅速化:江刺市立図書館
文部科学省が公表している事例によると、岩手県江刺市立図書館では2002年頃から、蔵書管理にICタグの導入を進めています。ICタグの導入により蔵書管理が効率化されたため、利用者の購入希望受付や予約制度を新たに採用。貸出返却業務や蔵書点検がスピーディになり、県立図書館との横断検索などのネットワークへの参加も可能になったそうです。書籍を複数冊まとめてICリーダで読み取れるようになるため、貸出返却業務時間の削減にも成功しているようです。
19万着の制服をICタグで管理:日本通運
富士通のリリース情報によると、物流大手の日本通運は、ICタグを用いた制服貸与管理システムを導入したそうです。ICタグを埋め込んだ約19万着の制服データを一括読み取りして管理することになります。これまで返却時にバーコードで一着ずつチェックしていましたが、ICタグの導入により制服管理の省力化が期待されています。
キャンパス内の不適切駐輪をICタグで一掃:筑波大学
株式会社マーストーケンソリューションの発表によると、筑波大学では自転車やバイクにICタグを貼り付けて管理する仕組みを導入しているそうです。
同大学では、「キャンパス内で利用されている自転車・バイクの正確な台数と駐輪状況の把握」ならびに「放置自転車と紛失自転車の一掃」が課題となっていたとのこと。その解決のためにICタグによる管理が導入されました。
その結果、職員がハンディターミナルで自転車のタグ情報を一括で読み取り管理できるようになりました。不適切駐輪車両の情報を収集して、問題がある車両の所有者には警告メールを自動送信し、マナー向上を促すことができるようになったそうです。また、紛失届けが提出されている自転車の発見にもICタグが役立っているとのこと。
◆◆ さて、いかがでしたでしょうか?
ICタグを用いた管理システムは、オフィスの備品管理、小売業の商品棚卸、医業の医療機器・介護用具の管理、物流における入出庫作業など、あらゆる現場への普及が進んでいます。ICタグの特長を理解し上手に活用することで業務を効率化することができます。物品管理にかかる手間と時間にストレスを感じているのであれば、導入を検討すべき時かもしれません。
ICタグを使った物品管理にご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。
このブログが皆様の「モノの管理のヒント」になれば幸いです。