備品管理は非常に負担の大きい業務です。一方で、経理や人事など他の管理業務と比べて効率化が遅れており、アナログな人海戦術で対応しているという企業も少なくありません。
本記事では、備品管理の精度(正確性)と効率を改善する方法や考え方について、数多くの企業の「モノの管理」の課題解決に取り組んできた弊社コンサルタントが、実際に体験した改善アイデアを交えて紹介していきます。
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目次
備品管理を改善するポイントは「見える化」
備品管理を改善する際に、前提として押さえておくべき考え方に「見える化」があります。
「見える化」とは、文字通り、状況や問題点を「目で見て分かる」体裁で示すことです。数字、記号、色、音、図表、画像など、さまざまな表現方法で情報を「見える」状態にして、人がより効率的に動ける環境をつくる、ということです。
代表的な手法の一つに、トヨタ自動車の「あんどん方式」「かんばん方式」があります。「あんどん方式」は、問題が発生すると「あんどん」を点灯して各部門の担当者に即座に知らせる手法。「かんばん方式」は、生産工程において、部品や数量を書いた「札(かんばん)」を共有することで、ムダなく生産を行う手法です。
会社の備品も、その置き場や状態、使っている人、持ち出し状況などをうまく「見える化」することで、正確で効率のよい管理ができるようになります。
備品管理を改善する具体的な方法【事例紹介】
では、具体的にどのような方法で、備品管理を改善していけばよいのでしょうか。ここからは、弊社コンサルタントが実際に体験した備品管理の改善例を紹介していきます。
●備品管理を改善する5つのアイデア
① 備品の保管場所を写真で可視化する
② 管理ラベルに入力欄を設ける
③ 消耗品の保管場所に「かんばん」を掲示する
④ 台帳・管理表に重要書類を添付する
⑤ 台帳・管理表への入力作業を自動化する
① 備品の保管場所を写真で可視化する
備品管理の精度や効率が低くなっている企業を観察していると、備品の保管場所が分かりにくくなっていることがよくあります。
備品の保管場所が分かりにくいと、備品の使用後、元の場所に戻されず、別の場所に置かれてしまうということがよく起こります。やがて、台帳に記載されている保管場所を探しても備品が見つからないという状況になり、定期メンテナンスや契約更新手続、追加購入など必要な処置も滞るようになります。
そこで有効なのが、備品を保管している棚の扉や引き出し、ケースなどの前面に、内容物の写真を貼ること。
特に、同じ品目の備品を複数保管していて、モデル名や型番をテキストで記載していたのでは区別がつかない場合など、メリットが大きいでしょう。
覚えておいてほしいのは、管理台帳に保管場所の部屋名や棚番号などを記載するだけでは不十分ということです。すべての社員が、律儀に毎回台帳を確認して、記載通りの場所に戻してくれる訳ではありません。
この施策で得られる効果
- 備品を探す時間が短くなる
- 定期棚卸し時の台帳の記録と実際の状態の乖離が小さくなる(=定期棚卸しの手間が減る)
- 散らかっていたオフィスが整然と片付いた状態になる
② 管理ラベルに記入欄を設ける
備品管理の精度と効率、両方に大きく影響するのが、定期棚卸し(実地棚卸・実査)です。
特に、頻繁に持ち出し・返却・移動、出し入れなどしない備品の管理に関しては、定期棚卸しさえ正確かつ効率的に実施できれば、備品管理自体の精度・効率も高く保つことができます。
そんな棚卸しの精度と効率を上げる手軽な改善策として、管理ラベルに以下のような記入欄を設ける、という方法があります。
棚卸しが完了した備品から記入欄にチェックマークを付けておくことで、いちいち台帳を確認しなくても、その備品の棚卸し作業が済んでいることを時系列で把握できるようになります。
こうした記入欄は、少し工夫すれば棚卸しだけでなく、持ち出し・返却管理や入出庫管理にも応用可能です。たとえば、持ち出し日・返却日・名前などの記入欄を設けておいて、持ち出しや返却のタイミングで名前や日付を記入させるようにしたり、保管場所の横に入庫数・出庫数・日付・作業者名などの記入欄付きの管理ラベルを掲示しておいて、入出庫作業を実施する度に記入させるようにしたり。
備品数や持ち出し頻度が多くない場合は、記入欄付きラベルを活用することで、備品管理の精度と効率を上げることができるでしょう。
この施策で得られる効果
- 棚卸し時の確認漏れ・重複確認が減る(=棚卸しにかかる時間が短くなる)
- 台帳を開く必要が無くなり、持ち出し・返却、入出庫の記録作業にかかる時間が短くなる(※数・頻度が多い場合は精度が下がる可能性があるため非推奨)
③ 消耗品の保管場所に「かんばん」を掲示する
備品管理を担当している総務担当者の業務のひとつに、文具や電池、プリント用紙など消耗品の在庫管理が挙げられます。こうした消耗品は見落されがちですが、在庫切れになると業務が滞ってしまうため、在庫切れの前に追加購入・補充が必要となります。
しかし、消耗品といっても品目は多岐にわたるため、すべての在庫を切らさず管理しようとすると、総務担当者の負担は非常に大きくなってしまいます。効率よく在庫切れを防ぐため、管理の改善に取り組んでおきたいところです。
そこで効果を発揮するのが、かんばん方式です。
やり方は至って簡単です。消耗品の保管場所に、次のような「かんばん」を掲示してみてください。これにより、「いつ」「どこで」「どの製品を」「いくつ」購入すればよいか、誰でもひと目で分かるようになります。
上記「かんばん」例の場合であれば、
- 残り3パックになった時点で(=発注点)
- オフィス用ふせん75✕25mm[品番:560552]を(=商品・品番)
- アスクルで(=発注先)
- 10パック追加購入し(=発注数)
- TA329-22-4の棚に(=棚番地)補充する
という意味になります。
ここでポイントとなるのは「誰が追加購入・補充作業を行うか」です。効率化を目指すのであれば、発注点に達するタイミングで、実際にストック棚から持ち出しを行った社員自身が、追加発注・補充作業を行うルールにしておくとよいでしょう。
この施策で得られる効果
- 消耗品の在庫切れがなくなる
- 重複購入・超過購入により保管場所からあふれた消耗品在庫が放置されることがなくなる(=オフィスが片付いた状態になる)
- 総務担当者の業務負担がほぼゼロになる
④ 台帳・管理表に重要書類を添付する
備品管理で重要な作業のひとつに、定期的なメンテナンスや破損・故障・紛失などが起きた際の対応があります。リース品がある場合には、リース契約の更新・解除などの手続きも必要になってきます。
これらの作業は、日常的に実施するものではないため、精度や効率を改善する取り組みから外れがちです。しかし、消耗品管理と同様、数が多くなれば管理にかかる作業量も増えていくため、管理負担が小さいうちに仕組みを整えておくことが重要になります。
仕組み化する上で有効な方法として、備品台帳(備品管理表)に次のような重要書類を添付しておくことが挙げられます。
- 取扱説明書・マニュアル
- 保証書
- 購入時の注文書・領収書
- 修理・メンテナンス等の契約書
- リース契約書
- 保険契約書、重要事項説明書、保険約款
- 物品外観を撮影した画像
これら、メンテナンス時や故障・破損時、リース契約の更新時に必要となる重要書類は、あらかじめデータ化し、台帳の該当備品欄に添付しておくようにします。そうすることで、故障時や契約更新時、いちいち管理担当者に必要書類の所在を確認したり、対応を依頼したりすることなく、誰でも自ら対処できるようになります。コミュニケーションにかかる手間と時間、伝達ミスによる不備などが無くなるので、作業効率が大幅に上がるのです。
この施策で得られる効果
- コミュニケーションコストを削減できる
- 属人的な管理ではなく組織的・体系的な管理ができる(管理者の退職・異動などによる混乱も避けられる)
- 管理担当者の作業負担が減る
- 組織が拡大しても同じ規模のリソースで対応できる
⑤ 台帳・管理表への入力作業を自動化する
備品管理の過程では、機械的な単純作業を要する場面が意外と多くあります。
たとえば、新たに備品を購入したとき。台帳(管理表)の項目に従って、購入日や金額、購入店舗、使用部門、保管場所… などの情報を入力しますが、そのうち大部分は、購入店から発行された注文書や領収書に記載された金額や日付を転記するだけの機械的な作業になります。
あるいは、基幹システムの固定資産台帳・償却資産台帳のデータと、備品台帳や消耗品管理表のデータを連携させるとき。基幹システムからCSVファイルでデータを取り出し、書式を整えて、備品台帳にインポートする… というルーティンワークをやったことがある、という人は、少なくないのではないでしょうか。
こうした単純作業の精度・効率を上げる方法として、RPAによるデータの転記・加工・インポート・エクスポート作業の自動化があります。
RPAとは、設定したシナリオに従ってPC作業を自動化してくれるソフトウェアのこと。法則性のある単純作業であれば、簡単に自動化することができます。
一例として、先述した単純作業をRPAで自動化したならば、次のような形になります。
- 備品購入後「注文確認メール」を受信すると、自動で購入日や金額、品名を取得して、備品管理台帳に転記を行う
- 毎月30日に基幹システムから自動でデータファイルをダウンロード、データ加工、備品管理台帳へのアップロードを行う
この施策で得られる効果
- 人為的なミスがなくなる(=精度が上がる)
- 休日や夜間など業務時間外に処理させることができる(=効率が上がる)
- 異なるシステム・プラットフォーム間でデータを共通化できる
- よりアイデアや思考力が求められる業務に時間を使えるようになる
ここで紹介した方法は、どれも簡単に実践できるものです。備品管理の精度や効率を改善したいという人は、自社の状況と照らし合わせながら、ぜひ試してみてください。
もっと抜本的に備品管理を改善したい企業におすすめの方法
「改善ノウハウはよく分かった。もっと抜本的に備品管理の負担を減らしたい」
「多少コストをかけてでも、従業員が備品管理に割く時間を限りなく少なくしたい」
お客様へのヒアリングを通して、こういった意見も頻繁に耳にします。特に、社員数が数百人を超える規模の組織になってくると、そうしたニーズが大きくなる傾向があるようです。
このような一定規模以上の企業には、①備品管理システムの導入や、②備品管理業務の外注化(アウトソース)が効果を発揮します。
ここからは、管理システムの導入により改善が見込めるポイントや、備品管理を外注化するメリット・デメリットについて解説します。
①備品管理システムの導入
備品管理システムを導入することで得られるメリットはさまざまありますが、ここでは「精度」「効率」の2つの観点から、得られるメリットについて解説していきます。
●備品管理システムの導入で得られる3つのメリット
1. スキャンで情報の読み取り・入力ができる
備品管理システムを導入することで得られるメリットのうち最も大きいのが、バーコード・QRコードやIC(RFID)タグをスキャンすることで情報の読み取りや入力ができるようになることです。
これにより、これまで「目視で確認」「手入力」など人力に頼っていた作業が、「読み取り機器でスキャンする」という機械的な処理に置き換わります。
管理番号の見間違いや、入力時のタイプミスが無くなるので、台帳に記載された情報の正確性は非常に高くなります。「ラベルを見て管理番号を確認する」「台帳の中から該当の備品を探し出す」「台帳に手入力で情報を入力する」などの作業も不要になるので、作業効率も劇的に改善します。
注意点は、「スキャンによる読み取り・入力」機能を持たない管理システムもあるということ。特に、無料で使える製品は、バーコード・QRコードやICタグラベルを使えないことが多く、精度・効率の改善という目的にはあまり適さないことが多いです。
導入検討時には、スキャンによる読み取り・入力が可能かどうか、事前に確認するとよいでしょう。
⇒ スマホを「かざすだけ」で備品管理できるコンビベースとは?
2. より高度な処理ができるようになる
管理システムを使わない場合と比べて、より高度で複雑な処理ができるようになる、ということも大きなメリットです。
たとえば、私たちが開発・提供している物品管理システムConvi.BASE(コンビベース)には、次のような機能が備わっています。
- 【棚卸し】スキャンによる実地棚卸・固定資産実査の実施
- 【貸出し・返却管理】スキャンによる貸出し・返却・貸出し予約の記録、予約状況のガントチャート表示、返却予定日に応じたメールアラート
- 【数量管理】消耗品・部品在庫などの在庫数量の自動計算、在庫数に応じたメールアラート
- 【入出庫管理】入出庫履歴の記録
- 【アカウント管理】アカウント単位のアクセス権限管理、アクセス履歴・変更履歴の記録
- 【紛失防止】ICタグによる備品紛失時のレーダー探索
こうした機能は、管理システムを利用しなければ実現が難しいものがほとんどです。自社開発するという手もありますが、開発にかかるコストと時間を考えれば、既に完成された製品を利用する方がメリットが大きいでしょう。
注意してほしいのは、ここで挙げている機能はあくまで一例だということ。ここで挙げた機能を備えていない管理システムもあるので、想定通りの使い方ができるかどうか、必ず最初に確認してから検討に入るようにしましょう。
3. 費用対効果に優れる
備品管理システムの多くは、月額課金制を採用しています。月額数万〜数十万円程度が相場ですが、後述する外注化(アウトソース)と比べれば、総じて費用対効果に優れます。
多少時間がかかったとしても、コストを抑えて備品管理の精度・効率を改善したいという企業の場合は、外注化ではなくシステム導入が有力な選択肢となるでしょう。
⇒ 【詳しくチェック】低コストで利用できるConvi.BASEの料金プラン
②備品管理業務の外注化(アウトソース)
備品管理業務自体を外注化(アウトソース)してしまうという手もあります。
●外注化(アウトソース)のメリット
- 最短距離(最短時間)でベストな管理体制を提案してもらえる
- 初期設計(マニュアル作成・フロー設計・人材教育等)に時間・人員を割く必要がなくなる
- 日々の備品管理業務に割く時間・人員を最小限に抑えられる
●外注化(アウトソース)のデメリット
- 初期費用として100万円単位のコストが必要
- システム導入と比べて高いランニングコストが必要
さまざまな管理ノウハウを持っているプロフェッショナルに、マニュアル整備や運用フロー設計を任せることができるため、最短時間でベストな管理体制を確立できる点は大きなメリットと言えます。一方で、相応のコスト負担が必要になるというデメリットもあります。
「お金で時間を買う」ことができる状況にある企業にとっては、外注化が有力な選択肢となるでしょう。
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